1時間のつもりが4時間。ゲームを閉じても頭の中では続いている。気づいたら夜で、気づいたら朝で、気づいたら休日が終わっている。
没入者タイプに、同じ体質を持つキャラクターを5人紹介します。5人に共通しているのは「かっこいい主人公」というより、何かに人生を使っちゃった人 という点です。
1. 宮本武蔵(バガボンド)
剣以外のものが見えなくなった男
剣を極めることだけを考えて、日本中を歩き続けます。食事も睡眠も人間関係も、剣のための変数でしかない。
没入者タイプの深いところにある感覚——「これをやめたら自分が何者かわからなくなる」——を、武蔵は全力で体現しています。バガボンドは長い漫画ですが、没入者タイプが読むと自然と止まらなくなります。没入している人間の話だからです。
2. アンドリュー・ニーマン(セッション)
没入が「怖い方向」に進んだとき
映画『セッション』は、没入者タイプが見ると少し居心地が悪くなる作品です。
練習で手が血だらけになっても止められない。睡眠も食事も人間関係も削って、ドラムだけを叩き続ける。「ここまでやりたくない」と思いながら見ていると、気づいたらスクリーンから目が離せなくなっています。
没入の気持ちよさと怖さを同時に描いた、珍しい映画です。
3. ベス・ハーモン(クイーンズ・ギャンビット)
チェスの世界に本気で住んでいる
天井を見上げるとチェスボードが見える。眠れない夜に棋譜が頭の中で再生される。現実の人間関係よりチェスの盤面の方がずっとリアルに感じられる。
「別の世界に本気で住んでいる」というのは比喩ではなく、ベスにとっては文字通りです。没入者タイプが深くハマったときの感覚を、これほど正確に描いたキャラクターは多くありません。
4. 馬締光也(舟を編む)
地味すぎる題材に人生を溶かした男
辞書を一冊作るために、長い年月を捧げる男の話です。
正直、派手なキャラクターではありません。しかし没入者タイプの時間感覚——「気づいたら深夜で、気づいたら何年も経っていた」——がそのまま物語になっています。辞書という地味すぎる題材を選んでいるのに、読み終えると何かを始めたくなる不思議な作品です。
5. 矢口八虎(ブルーピリオド)
ある日突然、スイッチが入った
それまで要領よく生きてきた高校生が、一枚の絵に出会って人生が変わります。
没入者タイプの「ある日突然ハマって、気づいたら全部注ぎ込んでいた」という体験が、そのまま物語の軸になっています。「好きなことに本気になっていいのか」という迷いを抱えながら没入していく姿は、若い世代に特に刺さります。スイッチが入る瞬間に心当たりがある人は、読み始めると止まらなくなります。
5人が没入した対象は、剣・ドラム・チェス・辞書・絵とバラバラです。でも「それ以外のことが見えなくなる瞬間がある」という点は全員同じです。
読み終わったあとに何か始めたくなったなら、たぶん没入者です。